テキストサイズ

秘密中毒

第7章 接近



――汗、かいたわね。

――お着替えしましょうね。

(おかーさん…?)

――おじやができたわよ、起きて食べられる?

(おかーさん、来てくれたんだ…やっぱり生きてたんだね……会いたかった…)

おかあさんの手、あったかい………

おっきくて…関節が太くて…たくまし………ってあれ?


「……あ」

すぐそばに、山田くんの顔。あたしの頬に当てた手を、あたしの手がしっかりホールドしてる。

「わっ!何してるの?」

「何って…おまえが泣いてるから」

「え」

確かにあたし、泣いてる。

「お母さんの夢、よく見るのか?」

うっ。寝言も言ってた?

「めったに見ないよ。たぶん、台所の音を聞きながら寝たから…子どものころを思い出したのかも」

10年前に母が亡くなったのを山田くんは知ってる。

クラスメイトだったから。

優しい手つきであたしの涙をぬぐって、山田くんが言った。

「病人食、作ってやったぞ。食うか?」

「うふふ」

口調が乱暴だけど夢と一緒…

――――はっ!まさか。

布団の中で確かめてみる。

「パンツ、はいてる…」

あたし、確か診察のあと、起き上がれずに寝たんじゃなかった?

「あ、確認したらはいてなかったから。はかせといた。」

「か、か、勝手に確認しないでよ!」

診察ならまだしも…そうじゃないのに見られるなんて。

「あ、あたしが慌てるのが面白いんでしょ?だからって―――」

あたしの様子を見て笑ってた山田くんがスッと真顔になって。

「面白がってるだけじゃないかもな。あんまり油断すんなよ」

と言った。

襲うつもりはないって言ったり、油断すんなって言ったり…

意味わかんない。

…………

……………………

ストーリーメニュー

TOPTOPへ