
秘密中毒
第8章 恋慕
「隙?」
「パジャマ濡らしたりして…誰の前でもこうなのか?」
パジャマ濡らすのは隙なのか。良くわからない。けど
「誰の前でもって、パジャマのとこに強引に入って来たのは山田くんだけだしっ…」
そのダメ出しはどうかと思うの。
「ふっ…そうだな」
山田くんがあたしを見下ろして笑う。
もうタオルとあたしの部屋着は同じくらいに湿って、拭き続ける意味はないんだけど。
山田くんはあたしの右肩をつかんで、あたしの胸元を拭きながら何か考えてるみたいだった。
あたしはされるがまま、突っ立ってる。
これも隙だって怒られるんだろうか。
だけどしょうがないよ。こんな顔で、こんな声で、こんな手で………
あたしは魔法にかけられてるんだから。
心臓がうるさくて、顔は噴火しそうに熱くて、なのに身動きできない魔法。
「…次の土曜が診察。そのときまでにどんなお礼してもらうか考えとくから」
ぼおっとするあたしの耳に、柔らかく入ってきた言葉………
の、意味がつかめない。
「お礼?」
「だから、診察代の代わりにお礼してくれって言ってんの」
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