
秘密中毒
第11章 虚言
いつものようにあたしは夕飯を作ってる。
米を洗い、野菜を切る。慣れた動作をただ身体がたどるだけ。
頭の中はさっきまでの信じられない出来事でいっぱいだった。
遅い昼食のあと、シャワーを借りて帰ってきた。
シャワーの後、山田くんの部屋を出る直前に呼び止められて…キス、した。
あたしの背中に両手を回して、ギュウって抱きしめてくれた。
ただの遊び相手なのに、それ以上の何かを期待してしまいそうな、
温かくて切なくて濃厚なキスを
あたしは拒めなかった。
「え、あれって反則だよね………」
まな板に向かって思わず呟く。
だいたい、存在自体が反則なんだから。
それなのに今日の彼は、すごくセクシーで。
大きくてきれいなオトコの手が、診察の時と比べ物にならないくらい、いやらしくあたしの中をなぞったり…………
いつもポーカーフェイスな顔が、少しだけ眉を寄せて切なそうになったり…
あたしの大好きなあの声で、上ずった息を吐きながら、命令したり…
あたしがイッた後、何度も一番奥まで入ってきて…味わうようにしてから山田くんも達した…り……
そんな全部がたまらなくエロティックで、あたしを追い上げたんだ……。
ひとつひとつを思い出すたびに、ぞくん、と身体がうずく。
正確に言えばアソコから背中、脳にかけて―――に、熱い塊が走り抜ける。
「いっ……!!」
指を、切っていた。
ぷっつりと赤いしずくが浮かび上がってくる。
「はあ……だめだ~」
いつもの家事さえ、今日は手につかないってことがようやく理解できたあたしは
ばんそうこうを巻いた指で、あの人の夕食の出前を取るために受話器を上げた。
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