
秘密中毒
第11章 虚言
お昼前、突然チャイムが鳴った。
どうせセールスだから居留守を使おうと思った。
(でも、もしかして…)
念のためドアのそばに行ってのぞき穴をのぞくと、また白衣の山田くん。
全身の血が逆流するような錯覚に陥ってしまう。
約束なんてしてないのに、どうして来たの?
意外すぎるけど期待どおりって言うべきか…
なんて思いながら、ドアを開けた。
「仕事じゃないの?」
ってあたしが話しかけてるのに、もう勝手にドアに鍵かけて上がりこんでるし。
そういえばすっぴんだ、あたし。
「来るなら電話とか、なんか連絡ぼぶっ」
ぶつかった。
いつもならあたしの顔見てすぐに何か意地悪を言う山田くんが、部屋に向かったと思ったら廊下で急に立ちどまってあたしを振り向く。
なんで急に来たんだろう。往診がなくなったからとか、まさか会いたくてなんて言わないだろうけど、山田くんの言葉を待っても無言。
あたしを見る目にいつものいたずらな色がなくて、感情が読めない。
「山田く…?」
居心地悪くなって口を開いたあたしの言葉は、ふさがれてしまった。
かみつくようなキスで。
…………
「ん!?…っ…ぁ…」
いきなりのことに文句を言いたくても、山田くんの舌が暴れてあたしはうめき声しか出せない。
両腕をつかんで壁に押し付けられながら
山田くんの好きなように口の中を蹂躙される。
この前のキスとは違う…
あたしの反応を引き出すような、やわらかくていやらしいキスじゃない…
「……ぅん…っっ」
だけど、強引に押し入ってきてあたしを翻弄する舌が。
確実に快感を呼び覚ます。
この手に、この唇に触れてる…それだけで頭の中で花火が上がったみたいに、喜びがはじける。
あたし、触れたかったんだ、この人に。触れてしまうとそう気がつく。
唇がやっと離れた時には、あたしは息が上がっていて、壁に寄りかかって立っていなくちゃならなかった。
