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夏冒険

第1章 夏冒険

夏休みに入ったばかりの8月上旬
小学6年生と4年生の兄弟二人きりで、埼玉の自宅から、親戚の家がある鎌倉市まで向かう。

今までは母親と一緒だったけれども、今回は初めての 二人旅。
駅のホーム、見送る母、手渡された2人分のきっぷ。水筒とおやつの入ったリュック。

ゲームのファンファーレが聞こえる。「さあ始めよう!」冒険の始まりだ。
心配そうな顔の母、手を振る兄弟、

閉まるドア。

ドアのそばに立つ2人、窓から流れ去る見慣れた景色、

窓の外、流れる風景。聞こえるのは電車の走る音だけ。

いつの間にか混み合う電車、

人波に押されて外れる繋いだ手。

お互いの姿を見失う兄弟、

小さな声で呼ぶ弟の名前、

人混みをかき分け弟の姿を探す兄、泣きべそをかく弟、

それを見た乗客の女性。

あらあらと微笑む。繋ぎなおされた手。

ドアの上の路線図を必死に見上げる、目的の駅を探す。

青く広がる空、入道雲、焼けつく日差し、響くセミの鳴き声、

二つの並んだ麦わら帽子、アイスバーを片手に二人は歩く。

祭りばやしの笛の音、立ち並ぶ屋台、大勢の人々で賑わう境内、

昼間のうだるような日差しのかわりにむっとした生暖かい風が吹く、普段と変わらない様子のコンビニ、

おまけのシール付きの菓子、
小さな駄菓子屋、カードゲームの販売機、川を渡る橋、鯉の魚影、水面を泳ぐ蛇、手づくりの罠、カブトムシ、日差しにきらめく水面、細い山道、木漏れ日、小さなお稲荷さん、

行く先々でアドバイスをくれる街のおばちゃん達は魔女の姉妹。

意地悪なノラ猫は、ふたりを騙そうとする悪の手先。

鎖が外れた飼い犬は、どこまでも追いかけてくるモンスター。

行くてを阻む、クモの巣

兄の右手に握られている紙きれ。

母からもらった乗り換え駅のリストは旅にかかせない地図。
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