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素晴らしき世界

第6章 不思議な同居人

仕事が終わり、帰る準備をしていると

「今日、一杯どう?」

先輩からのお誘い。

「すみません、今日はちょっと……」

「お前に予定があるなんて珍しいな。
明日は雪だな、きっと」

「ちょっと、先輩。酷くないですか?」

「悪い。いつもなら、渋々だけど
飲みに行くだろ?彼女でも出来たか?」

「違いますよ」

「満更でもない顔してるぞ?」

「えっ?」

俺の反応にニヤリと笑った。

ハメたな、先輩……

「たまには俺にも付き合えよ。
彼女によろしくなー」

「彼女じゃないですってば」

俺の叫びも虚しく
後輩を連れて先輩は帰って行った。

ホームで電車の到着を待つ。

家に早く帰りたいなんて
我ながら気持ち悪い。

でも、家路までの道のりは
自然と早足になる。

アパートに到着し、
2階にある俺の部屋を見上げると
明かりが灯っている。

駆け足で階段を登り、
鍵を使いドアを開けると
いい匂いが鼻腔をくすぐる。

「お帰りなさい、大野さん」

「ただいま、美味そうな匂い」

「でしょ?今日はね……」

「「カキフライ」」

「もうすぐ出来るから、先にお風呂どーぞ」

「ありがとう」

寝室に着替えを取りに行った。

シーツも新しいのに変わっていて、
布団もフカフカだった。

俺は思わずベッドにダイブした。

顔を埋める布団からお日様の匂いがする。

暫くすると、
ドアをノックする音が聞こえて

「やっぱり……
早く起きて、お風呂に入ってください」

「はーい」

素早く風呂を済ませてリビングに向かう。

テーブルには料理が並ぶ。

「いただきまーす」

カキフライを一口食べる。

「どう?美味しいですか?」

「うん、美味い。久しぶりに手料理食った」

「良かった、味見できないから不安で」

そう、テーブルには俺の料理だけ。

彼は食べる必要がない。

だって、彼は幽霊だから……

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