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素晴らしき世界

第9章 家族ゲーム Ⅱ

【翔side】

智が帰ったあと、パソコンを開いた。

デスクトップにある
アイコンをクリックする。

そこにはこれまでの計画内容が
詳細に書いてある。

ここまではすべて順調だ。

しかし、これからが重要だ……

ジジイが死んで、遺産は娘に入るが
それをどうやって智が手に入れるか。


会社を立ち上げたいと言って
資金を出してもらう……


借金があると言って
肩代わりしてもらう……


いっそのこと死んでくれたら
楽なんだけどな……


でも、智の手を汚すわけにもいかない。


息子が母親を殺す。

悪くないな……


でも、アイツが罪を犯せば
きっと悲しむだろうな……

でも、犠牲は厭わない。

お前が傷つく結果になったとしても……


俺だって罪にならないなら
見つけ出して殺してたい。

母親も父親も、俺たちを邪険にした
すべてのクズどもを……

そんなことを考えていると、
玄関のドアが開く音が聞こえた。

俺は急いでパソコンをシャットダウンし、
深呼吸をする。

「あれ?兄ちゃん、帰ってたの?」

「今日は、仕事早く終わったからな」

冷蔵庫を開けながら、

「兄ちゃんも何か飲む?」

「じゃあ、ビール取って」

「りょーかい」

手に缶ビールと
ミネラルウオーターを持って
俺の隣に座った。

「どーぞ」

「ありがとう」

俺は缶ビールを開け、
グイッと喉に流し込む。

「毎回、美味しそうに飲むね」

「会社終わりの一杯は
格別に美味しいよ」


智とした後だから
美味しいなんて言えないよな……


隣でネラルウオーターをゴクッと飲み

「俺も早く二十歳になって、
一緒に飲みたいよ」

「その前に大学受験な」

「俺は就職するの!」

「ダメだ!」

「だって……」

「金の事は気にすんな。
だから、しっかり勉強しろ」

「うん、わかった。
でも、無理しないでね」

「お前のためなら
無理なんて思わないよ」

頭をクシャと撫でると、
優しく微笑み返してくれた。


本当はこんな汚い手で、
お前に触れちゃいけない。


俺にこの笑顔を見る資格はない。


でも、許してくれ……


俺の前からいなくならないでくれ……


唯一の家族で、
お前の幸せが俺の生きる理由だから……
















和也……


【To be continued……】

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