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偽りの好きも好き

第1章 求めてる


16歳の頃、
ただ毎日学校に行って
ただ勉強して
ただ友達と遊んで
そんな刺激のない毎日が大嫌いだった。

早く大人になりたくて
早く自由になりたくて

それにはまず、
学校を辞めるしかないと
当時クソガキな自分、
馬鹿なことに気付きました。

(今思うと、両親にだいぶ迷惑かけたな)

氷しか入ってないグラスを
じっと見つめながら
現在進行形の自分のクズさに
つくづく、吐き気を感じる。

当時16歳の私、
親に反抗して家飛び出して
先輩の紹介で年齢偽って
セクキャバに入店して
週に6日出勤もして
常におっぱいが痛かったなぁ

そう、これが最初に
初めて働いた夜のお店。


「何考えてんの、にいなちゃん」

おちゃらけたように言い、
じっと見つめていたグラスを
手に取り、慣れたようにまた
私の大好きなカクテルを
作ってくれる。

「べっつにー、なんでもいーじゃん」

わざとらしい高い声を出して
ヘラヘラと笑う私に
裕二は、可笑しそうに
ハイハイって流した。

にいな、毎日皆が呼んでくれる
私の偽りの名前。
仕事の為に付けた、偽りの名前。

嗚呼、いけない
今日は感傷に浸る為に
わざわざ仕事終わりに
ここのショットバーに
飲みに来た訳じゃないのに…

「お待たせ」

私の考えを遮るかのように
そう言っては
コースターの上に出来たカクテルを
そっと置いてくれた。

「ありがとう」

篠崎 裕二、年齢は20歳
ショットバーの店員だ。

1年前に飲み友達に
連れて行かれた店で
出会ったのがきっかけで
ほぼ毎日、1人で来たり
または友達2人で来たりと
店にハマってるんじゃなくて
裕二にハマってる自分だ。


「んで、どーしたの?」

カクテルを少しだけ
口付けて飲んでいる私に
いきなり裕二が言ってきた。

「どうしたのって何が?」

思わず手に持っている
カクテルのほうに
視線を逸らす。
相変わらず鋭い人


「ずっと考え事してるかのように見えたからさ、なんか悩んでるんかと思って」

チラッと裕二の方に視線を送れば
笑顔は笑顔なんだが
心配そうにカウンター越しから
こちらを見つめてくる。

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