テキストサイズ

カミカゼ短編集

第1章 「翔くん。絵、見に来る?」     …O×S

Sside


「…んっ…」

絵を見に来たはずなのに

さっきまで智くんの空想世界に魅入っていたはずなのに

首筋を這う舌に体を痺れさせている


「は、ぁ……ッ」

抱きしめてるのは俺なのに

だって、この人が抱きついてくるから

いつもの様に『お疲れ様』って頭を撫でて

智くんは俺の腕の中で『フフッ』って笑ってたのに

キスも無しに

弱いと知ってて、俺の首を攻め立てる


そうくると思ってたけど…

いつもの事だから




智くんが少し背伸びをして俺の耳を食む

ピチャ…、クチュ…

舌が耳たぶを這い、

穴にねじ込まれる

それはもう少し後の行為を連想させて

思わず体がピクッと震える

「ふふ…」

智くんが耳元で笑う

きっと体が震えた理由を分かってるからだ


シャツのボタンが幾つか外され

ざらついた舌が鎖骨の辺りを彷徨いだす

シャツの裾から侵入してきた長くて綺麗な指が

俺の胸の突起を摘まむ

「…あ…っ」

思わず漏らしてしまった喘ぎ声に答えるように

智くんが鎖骨の淵を甘く噛んだ



立ったまま

智くんに翻弄される

俺は抵抗も応えもせずに、されるがまま

どうしたらいいのか分からない

正解が見えない

だからいつも、そのまま流される

せめて“立ったまま”は嫌だから

場所を変えたいくらいは言うけど…



智くんはどう思ってるんだろう

何を考えてる?

俺のことも

この行為の意味も

聞きたい

けど、聞けない

心の何処かで何かを期待してる俺は

このひと時を壊したくなくて

『いつもの事』とウヤムヤにしてるんだ





ストーリーメニュー

TOPTOPへ