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キョウダイ

第17章 絡みあう糸



明side






慌てて部屋を出た葵に気付いていた。






その手を捕まえて、もう一度キスしたい。






だけど、そんな事したら、また恐がられる。






そっと自分の唇に手をやる。






葵の温もり、感触を思い出す。






自分の顔が赤くなっているのを感じた。







嬉しい。







すごく嬉しい。







あの葵が俺に、キスをした。







しかも自分から。







自覚なしに。






どういう事だ?






落ち着こう。















俺はまだ、嫌われてないのか?







家族のようなものだと言われた時はガッカリした。







だけど、家族にキスなんかしない。






そんな事されたら、期待してしまう。






希望をもってしまう。






生きたいと望んでしまう。






残り少ない人生を謳歌したいと思ってしまう。







望んでもいいのか。






葵との未來を。






ほんの少しだけの未來を。







「ダメに決まってる……」







重い頭を抱えて首を振る。







そんな未來、イメージ出来ない。







そうして諦めて、自分の思いに蓋をする。







あと少し。







待っててくれ、奏……。

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