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キョウダイ

第18章 育ての親






料理が運ばれて来た。



真っ白なお皿に小さくちょこちょこ前菜が乗せられている。


綺麗な盛り付けでウェイターの人が1つ1つ丁寧に説明している。


よく分からないし、頭に入らない。



ワインが空けられてお父さんのグラスに注がれている。


赤い液体。



あたしのグラスにはオレンジジュース。



「じゃあ、久し振りの再会に」



「かんぱ〜い」



冗談ぽく言ってグラスを合わせる。



「あれっ?
お父さん車で来たよね?
帰りはどうするの?」


はっと気付く。



「今日はここのホテルに泊まりだよ」



あっさり言うけど。



「あたしは?
どうやって帰るの?」


「葵も一緒に泊まればいいだろう」


あっさり言われてしまう。


はああっ?


ちょっと、待ってよっ。


家族には内緒で来て欲しいって。


大事な話があるって、言ってたよね?


車でまるっと一時間位かかる距離だったよっ?


「やっ、それはちょっと困るよお父さん、家に黙ってでたからなんか連絡しとかないと心配するし」


「後で連絡するから大丈夫だよ」


「……っ!」


なんか違和感。


じゃあ、どうして内緒で来て欲しいって言ったんだろう。


分からない……。


建築士のお父さん。


ちょっと変わったとこがあったけど。


「話があるって、何?」


酔っ払う前に聞いておきたい。


ワイングラスを傾けてグイグイ飲んでるけど。


何だろう?


悠ちゃんに似ている。


やっぱり親子だ。


「俺はね。
離婚する時に葵を引き取りたいって母さんに言ったんだ」


「……えっ?」


どうして?


血が繋がってないのに?


血が繋がっている、悠ちゃん、海斗、柊斗を差し置いて?


どうして?


怪訝そうなあたしの表情に気付いたのか、お父さんがふっと笑う。


「葵の両親とは幼馴染みでね、本当のキョウダイのように一緒に過ごしたから。
特にお前は香住にそっくりで、手元に置きたかったんだよ」


手元に置きたかった?


首を傾げる。


「鈍いところも香住に似ている。
ずっと香住が好きだったんだ。
お前の事を娘として見る事が出来なかった。
どうしても面影を追ってしまっていた。
そんな俺を母さんはすぐに見抜いていたよ」

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