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キョウダイ

第18章 育ての親






足元がふらついているお父さんの体を支えて部屋へと向かう。


「すまないね。
久し振りに葵に会えたから、調子に乗ってしまったようだ」


カードキーを使って鍵を開ける。


ドアの内側に入って、広い部屋にあるベッドルームにお父さんを支えて歩く。


ベッドの上に倒れ込むお父さん。


ほっとしてベッドから離れようと背中を向けた瞬間、


グイっ!


いきなり腕を引っ張られ、


バランスの崩したあたしの体はベッドの上に倒れ込んだ。


びっくりして悲鳴をあげるあたしの体の上に、お父さんが覆い被さる。


その素早い動きに呆然としてしまう。


だって。


さっきまで酔っ払ってフラフラだったのに。


「この状況が分かってない顔をしてるね。
いい年して恥ずかしいけど、あの程度のお酒で酔う事は殆どないんだよ。
お前があんまり心配するもんだから甘えてみたくなってね?」


お父さんの端整な顔立ちがあたしの顔に近付き、斜めに傾く。


ワインの匂いにくらくらするけど。



まさか。


お父さんなのに。


そんなまさかっ。


近付く唇から顔を背けると、そのまま首筋に舌が這わされる。


「いやっ、だめっ、お父さんっ……!」


ゾクリとした舌の感触。


ベッドの上でジタバタと暴れてお父さんの腕から逃れる。


荒い息をつきながらベッドから下りて。


走りながらカードキーを握りしめる。


「葵っ!
ここから一人では帰れないよ、もうなにもしないから……」


お父さんの叫び声が聞こえるけど。


あたしは必死で走ってエレベーターに乗って。


カードキーをフロントに返して。


「お客様、どちらに……」


また、走って、ホテルの外に駆け出した。

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