Sinful thread
第2章 喪心
葵の家に住み始めてから、一週間が過ぎていた。
……あの夜のことは一切話題に出ることはなく、
もちろん、あたしからも聞くこともできないまま、
何事もなかったように、葵との生活は続いている。
「希美、おはよ」
そして、今日もいつも通りの葵の姿がリビングにある。
そのスーツ姿には未だにドキッとしてしまう。
「……おはよう」
……なにも教えてくれないし、聞かせてくれない。
そんな雰囲気を感じる。
聞かないことが、暗黙の了解であるかのような。
そう思いながら、どこかで期待していた。
あたしと一緒に住むことをOKしてくれたのは、
あたしにあんな風に触れてきたのは、
葵も、あたしと同じ気持ちだからじゃないの……?