Sinful thread
第1章 居候
『希美、あなたは葵くんのとこで一緒に暮らしなさい』
──────一週間前、あたしのお母さんに言われた言葉。
その言葉を聞いたその日。
あたしのお母さんは、再婚した。
葵くんというのは、再婚相手の息子。
つまり、あたしの血の繋がっていない兄になる。
もともと一人暮らしをしていた社会人の葵は、あたしと一緒に住むことを、“何故か”快く受け入れたらしい。
葵とは、再婚する前にも何度か会ったことがある。
一目惚れだったんだと思う。
初めて会った時からずっと、あたしは葵のことが好きだった。
だから、あたしにとっても葵と一緒に暮らせるなんて、思ってもない幸運だった。
葵の整った顔立ちも、頭が良くて、ちょっと意地悪なところも、あたしよりも4つ上という年の差も。
20歳になって間もなかったあたしには、全部が、理想だった。