Sinful thread
第2章 喪心
「疲れてないよ。ちょっと眠いだけ」
そう言って誤魔化す。
これ以上掘り下げられたら嘘に気付かれてしまいそう。
「俺じゃ頼りになんねぇだろうけど、なんかあったなら聞くぞ?」
「……なにもないよ」
いつもより優しさが心に沁みる。
でも、それに縋ってしまっていいのかわからない。
「言いたくないならいいけど、男だからこそ話せることもあるだろ。今日飲みにでも行くか?」
「……昨日も七海たちと飲みに行ったもん」
「俺の奢りでいいし。最悪話してくれなくてもいいから。俺希美と飲んでみたかったし」
男だからこそっていうのはあるかもしれないけど……。
なんでこんなに心配してくれるんだろ。
「……わかった。授業終わったらね」
奏多の押しに負けてしまった。
……でもきっと、誰かに話して楽になりたいっていう気持ちも、少なからずあった。
解決なんてしなくていい。
解決するようなことだとも思ってない。
奏多なら共通の友達もいないし、大丈夫だろうと思った。
それよりもただ、誰かに聞いて欲しかった。
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