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Sinful thread

第2章 喪心



「葵さんのこと諦めろとか、彼女から奪えとか、そんなことは俺は言えない。
けど、その隙間を他の男で埋めようとすんのはやめろ」


自分勝手なあたしを責めたりしない。
優しく諭すような、でも力強い言葉。


「ごめん、奏多……あたし、ほんとに……」


申し訳なさでいっぱいで、謝罪がうまく言葉にならない。
気を緩めると、また泣いてしまいそうになる……。


「いいよ。気付けただけでよかったじゃん」


顔はよく見えないけど、奏多が微笑んでいるのがわかる。


「……ありがとう」


「もう寝るぞ。明日も授業だろ?」


おやすみ、と一言言うと、奏多は反対側を向いてしまった。


奏多、ごめんね。
……ありがとう。


奏多の背中に、そう心の中で呟いて、あたしも瞳を閉じた。


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