Sinful thread
第5章 爪跡
──────若干の肌寒さを感じて、目が覚めた。
……葵の匂いがする。
すぐに、ここは葵のベッドの上だと気付く。
……そうだ。
あたしたち、昨日……。
昨夜のことを思い出して、冷めた熱がまたぶり返してくる。
胸が、ドキドキする。
あたしの頭は、心は、身体……は、
まだそれを鮮明に覚えている。
でも、隣に葵の姿はない。
きっともう、仕事に行ったんだろう。
どんな顔をして会えばいいのかわからないから、逆に良かったのかもしれない。
あたしも大学へ行く準備をしようと、もぞもぞと布団から出る。
……てか、あたし裸じゃん。
肌寒さの原因はこれか。
寒さを我慢しながら、寝起きでまだ気怠い身体を引きずって、のそのそと洗面所へ向かう。
鏡の前に裸のままの上半身が映し出されると、視線があるところへ移った。
……なに、これ。
白い肌によく映える、一点の赤い跡。
昨日まではもちろん、こんなのなかった。
葵が、付けたんだ……。