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「うるさいなぁ‥」
絢は眉間にシワを寄せ、聞こえるか聞こえないかくらいの低い調子の声で言った。さっきまで観ていた面白い夢に、真希の鼻歌が邪魔をしてきたのに腹を立てていた。
「あら、ママの鼻歌が掃除機で聞こえずらいのかしら？残念ね。それより早く起きて準備しなさい、もう20分よ。」
「うそ！」
絢はまるでびっくり箱からピエロが飛び出してくるように、がばっと起き上がった。
そしてお決まりのセリフを言う。
「なんでもっと早く起こしてくれなかったの！」
眠気など一瞬で吹っ飛び階段を勢いよく降りた。
「ドンッ！！」
「痛ーッ‥」洗面所のドアの角に足の指をぶつけ、両手で指先を押さえうずくまりそうになったが、時間もなく泣きそうな顔をバシャバシャと水で洗い、歯を磨いた。
天然パーマのかかった透き通ったモンブランのような色をした長い髪の毛はいつものように上の方で一つに結び、セーラー服に着替え朝ごはんを食べずに出ようとしたところで、玄関に降りてきた真希が真剣な表情で言った。
「今日は大事な話があるから、学校が終わったら寄り道せずすぐに帰って来なさい。」