Spring Blind ~風の中、歩き出す~
第5章 俺と、大きくなった君の存在。
~Takanori Side~
…歩風と別々の道を歩き始めてから、早5年…。
成人の日を迎え、15歳までを過ごしたあの町に戻って来ていた。
袴に身を包み、成人式の会場である、何回も来た事のある市民広場に来ていた。
周りを見渡せば、見覚えのある顔がちらほら…。
でも…。 俺が今一番会いたいと願うあの人の姿は、どこを見ても見えなかった。
「久し振りだな、岩田」
そう言われて振り向くと、懐かしい人達が立っていた。
「要、柚、希緒…」
いつも一緒にいた奴らだった。
要(かなめ)、柚(ゆず)、希緒(きお)。
こいつらとは、ずっと中学時代ふざけあっていた。
要は、県内でも頭が良い方の高校に進むくらい頭は良いんだけど、何故か歩風にはちょっと冷たかった。
…まあ、いわゆるツンデレみたいなやつだけど。
柚は、名前だけ聞くと女の子みたいだけど、れっきとした男。
…でも、見た目も少し女子っぽいんだよなぁ…。
そういう意味では、歩風も話しやすかったみたい。
…時々歩風以上に女子力が高い事をするから吃驚したけど…。
そして、希緒。
こいつはちゃんとした女。
歩風が唯一気を許せる女友達だったみたいで、よく二人で話している姿を見かけた。