Spring Blind ~風の中、歩き出す~
第5章 俺と、大きくなった君の存在。
「ねえ、剛典は見てない? あいつ」
「俺もそれ聞きたかったんだけど…」
「って事は、見てないか」
「だな…」
…皆、見てないんだ。
今、元気なのかな。
会いたいよ…。
なんで、今日いないんだよ…。
「とりあえず、式だけは出ておこうよ。 もうすぐ始まるって」
「ん、分かった…」
何となく気は進まなかったけど、柚に手を引かれてホールに入り、近くの椅子に座った。
その後、知事の話やら市長の話やら偉い人達の話が続いたけど、何となくしか聞いていなかった。
長時間続いたそれも終わると、皆ぞろぞろと外に出て、それぞれの同窓会に向かうようだった。
…結局、式の途中にも、歩風が姿を見せる事は無かった。
「…何抜け殻になってるんだよ」
「だって…」
要に言われて、歩風の事を言おうとしたのに、何故か言葉に詰まった。
「鈴木か?」
「ん、まあ…」
「あいつだって、お前の存在を忘れてる訳じゃねえだろ。 絶対同窓会には来ると思うぜ」
「だよな…」
「だから、元気出していこうぜ!」
「…おう!」
要に励まされ、待っていてくれた柚と希緒と一緒に、同窓会の会場であるホテルへと向かった。
…歩風、来るといいな…。