Spring Blind ~風の中、歩き出す~
第1章 夏の日常。
…本当は、今すぐにでも歩風をこの腕の中に閉じ込めてしまいたい。あの柔らかそうな唇を奪い取ってしまいたい。
…だけど、そうする事が出来ないのが現実で…。
「ただいまー」
いつの間にか着いてしまった自宅に、そう呼びかける。
相変わらず無言の家に軽く溜息をつきながら上がる。
両親は働きに出ているから、静かで無言のお迎えなんて当たり前。
逆に、声がしたら怖い位だ。
だけど、どこかで寂しい気持ちがあるのは、ここだけの秘密。
そのまま自分の部屋にまっすぐ向かい、入った途端に鍵をかけた。
そして、ベッドにダイブした。
今日の下校時は制服だったため、着替えようとネクタイを緩め、Yシャツのボタンをいくつか外す。
そのままの格好で枕元に置いてあった携帯をいじる。
すると、歩風からメールが来た。
「剛典~。 勉強教えて~(>_<)」
顔文字を使うなんて可愛いな、なんて思いながらも、そのメールに「いいよー。」とだけ返した。
「送信完了」の文字を見ると、ベッドから降りて部屋着に着替えた。
そして、またすぐにベッドに横になると、いつの間にか重くなってきていた瞼を閉じ、そのまま眠りについた。