Spring Blind ~風の中、歩き出す~
第2章 悪いお知らせと気持ち。
~Ayuka Side~
…季節はあっという間に過ぎ去り、もうすぐ冬になろうとしていた。
私達の受験勉強も佳境に入ったその頃、悪いお知らせが舞い込んできた。
「えっ…。 それ、本当なの?」
「ゴメン、歩風…」
パパから聞いた話。
…「パパが転勤する事になるかもしれない」。
「ちょっと…。 ちょっとだけ、時間をくれない?」
「ああ…。 分かった」
パパの返事を聞くと、すぐさま部屋に向かった。
部屋に入り、ドアを閉めるとベッドに転がった。
もしも、私がパパの転勤に付いて行ったら…。 剛典と離ればなれになってしまう。
せっかく仲良くなれたのに…。 せっかく、剛典の事好きになれたのに…。
離れたくなんかないよ…!
…気が付くと、誕生日に剛典からもらったぬいぐるみを抱きしめていた。
そんな時、コンコンッ、とドアを叩く音が聞こえた。
「…誰?」
「あゆ? 入ってもいい?」
「…どうぞ」
体を起こすのと同時に、その声の主は入ってきた。
「お兄ちゃん…。 どうしたの? あゆに用事なんて、珍しいね」
お兄ちゃんの前では、甘えたいのか自分の事を「あゆ」と呼ぶ癖がついてしまっていた。