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旅は続くよ

第1章 ひとつ屋根の下

今年初めの梅の花が咲く頃、
大野の婆さまが亡くなった

血の繋がりのない俺が言うのもなんだけど、昔気質の厳しい人だった

血の繋がりのある智くんは
一応葬儀の時涙を少し見せたけど

O「ま、婆ちゃんには悪いけど大往生なんだし…これでやっとだよな」

俺にだけペロリと舌を出して見せていた


それにはちゃんと理由がある

智くんと俺は、俺が6歳の時からだから

彼是もう20年近く一緒に暮らしている

俺は智くんを人に紹介する時は「兄」と言い

智くんは俺を「弟」と言ってくれる

だが、戸籍上では俺と智くんは従兄弟であり

それもこれも全部、

祭壇の上の写真でも難しそうな顔してる大野の婆さまのせいだった



智くんのお母さんが病気で亡くなったのは智くんが4歳の頃

当時3歳の俺にははっきりとした記憶なんかないが

病院のプレイルームで2人で遊んでたのは覚えてる

やたら玩具やらジャングルジムやらあったからね

呑気な子供らを余所に、俺の母親は実姉の看病を懸命にしたらしい

努力の甲斐空しく亡くなった後も

男手1つになった家庭を母親は
俺を連れてよく訪問していた

その内、一緒に住むようになって

正式に家族になろうとした矢先、

大反対したのが大野の婆さまだ



「美代子さんは良い人だったけどねぇ。妹を後妻に貰うなんて体裁の悪い事ったら無いよ」

それがババア、
いや、婆さまの決まり文句だった

ウチの母親がシングルマザーなのが気に入らなかったらしい

ついでに言うなら、
バリバリの仕事人間だったのもお気に召さなかったらしい

確かに料理は大野の父さんの方が上手かった


とにかく婆さまが亡くなって、

これで両親も結婚できると智くんも俺も大いに喜んだ

すぐに籍を入れて欲しかったけど

婆さまの喪が明けてからという
両親の意見を尊重してた矢先


事故が起きた



会社の飲み会に参加した母を父が車で迎えに行った帰り道

交差点で停まっていたところに

居眠り運転のトラックが斜め前から突っ込んできて


2人とも即死だった



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