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旅は続くよ

第1章 ひとつ屋根の下

A「え…でも…、いいよ。
俺ら、何とかアパートでも借りて引っ越そうかと」

S「バカ。引っ越しだって金掛かるだろ?ウチなら部屋だけはいっぱいあっから」

雅紀達に貯金なんて残ってないのはわかってる

可奈子叔母さんの治療に随分な費用が掛かったはずのに

雅紀達は誰にも助けを求めなかったから


M「じゃ、まー兄だけ頼むよ。俺は学校やめて働きに出るから…」

潤が口をはさんだ途端、

雅紀がすごい剣幕で遮った

A「だめっ!!大学やめるのなんて絶対認めないって言っただろ!?」

M「でも…、今までだって可奈子ママには散々お世話になったし、俺は大野の家とは…」

A「潤!!お前は俺と血が繋がってんの!兄弟なの!違うか!?」

M「…まー兄……」

雅紀の勢いに押されて潤が口をつぐんだ



まあね、

これもいつもの事

可奈子叔母さんが元気だった頃なんてもっと酷かった

叔母さんも雅紀も潤が可愛くて仕方ないのに、潤が遠慮した態度を時々見せるから

その度に2人して、
やれ本当の親子だの兄弟だのと押し切ってたっけ


大体、ここの兄弟も少し複雑だ

雅紀と潤は腹違いの兄弟

嫌な言い方をすれば、

雅紀は本妻の子で潤は愛人の子だ

ただ戸籍上は兄弟ではなく、赤の他人

雅紀の父が、潤を認知する前に亡くなってしまったからだ


俺らも幼かったし、
可奈子叔母さんも詳しく教えてくれなかったから、経緯はよく知らないけど

潤が小学校低学年の頃には、
可奈子叔母さんが引き取って雅紀の兄弟として育てていた



「潤ちゃん。アンタいつまでも遠慮してると、可奈子ママがあの世で怒るわよ?」

「そうよ~。潤ちゃんはママの自慢の息子だったんだから」

「酔うといっつもまーちゃんと潤ちゃんの自慢話してたわよねぇ…」

「まだ若いのに…、こんな呆気なく逝っちゃうなんてさぁ……」

姐さん達の間ですすり泣きが始まった

雅紀と潤も目を潤ませながら、必死に堪えている


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