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旅は続くよ

第13章 俺だって

N「…無理なんだって。
翔ちゃんがどうこうじゃなくて、俺が無理なんだよ」

ニノが溜め息まじりに言う

N「他人を好きになるなんてさ…。
やだよ。ウチの母親みたいになるのなんか真っ平ゴメンだね」

A「はぐらかすなよ、質問に答えてない。
…まさか、ホントに好きなの?」

N「そんなワケないじゃん。……でも…」

A「…『でも』、何?」

N「…あったかい人、だと思うよ。とっても」


ズキンとした

背中まで響くくらい、心臓が痛む音がした

俺だって翔ちゃんは好きだ

小さい頃から慕ってる兄貴みたいな従兄だ

でも今翔ちゃんを『あったかい人』だというニノの顔は

俺の大好きな従兄をただ褒めてくれる顔じゃなくて

ほんの少し笑みを浮かべるのが気に入らなくて

ニノも翔ちゃんも気に入らなくて

なんか凄く焦る


A「俺は?」

N「へ?」

A「俺は“あったかい”?」

N「…何言ってんの、アンタ」

ポカンとした顔してから、ふふって表情を崩した


N「アンタと翔ちゃん比べてどうすんの。全然違うでしょうよ」

A「何が違うのさ」

N「アンタは別にそんなんじゃないでしょ」

A「そんなんじゃないって何だよ」

ムキになって、心の中をそのまま口にした

焦る気持ちが止まらない


A「違わないよ。そんなんじゃないって事ない。俺だって…」

止まらないんだ


A「俺だって、ニノが好きだよ」


N「…え?」

A「ニノが好き。俺も翔ちゃんと同じだよ」



言ってしまった

隠してたわけじゃないけど

打ち明けなかった気持ち


ほら、困ってるじゃん

見る見るニノの眉が下がって視線が下を向く

わかってたんだ、こういう顔するって

わかってたのに

…我慢できなかった……



A「気づかなかった?俺の気持ち…」

ああ…、黙ってるんだね

そうだよね

だって、俺は隠さなかった

ニノは勘がいいって分かってるのに


A「気づいてたんだろ?」

沈黙が答えになっていた



俺はパンドラの箱を開けちゃったのかな

箱の中身は“悪”じゃないけど

今、そこからいろんな物が飛び出ていったのかも知れない

神話では、最後に残ったのは“希望”

俺にも希望があるのかな

N「何で言うんだよ…、バカ」

俯いたまま走り去ったニノからは

何も答えは返ってこなかった




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