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旅は続くよ

第14章 好敵手

A「『無理』ってのはさ…、
『翔ちゃんが無理』なんじゃないよ」

S「じゃあ…、何だよ」

A「恋愛が無理なんだって」

S「…はあ?」

A「お母さんの事、聞いてる?」

S「ああ…」

A「お父さんの事も?」

S「…ザックリだけどな」

A「そう…」


そんなら話は早いんだけど

ニノがそこまで翔ちゃんに打ち明けてるのが少しだけショックだった

俺って案外心狭いんだな…


A「ニノはね、他人を好きになって
お母さんみたいになるのが嫌なんだってさ」


恋愛の話になると

ニノが時々、少しずつ零してた言葉

『相手の心なんて、どうこう出来るもんじゃないのに』

『恋愛なんて所詮エゴじゃないの』

それはまるで、

怖がってるみたいだった

恋愛が無理なんかじゃなくて、

そんな怖い世界に足を踏み入れる事が無理だと言ってるみたいだった


A「他人に心奪われて、自分も他人も不幸になっちゃう…、
そんな風に考えてるみたい」

S「…何だよ、それ。…悲しい事言ってんだな」

A「うん、悲しいね…」

翔ちゃんの呟きに俺も頷いた

悲しいニノ

可哀想なニノ

だから俺は守ってあげたい

でも、翔ちゃんは違うみたいだった


S「でもさ、お母さん亡くなったのは随分前だろ」

A「そうだけどさ、ニノは今でも傷ついてるんだよ。
仕方ないんじゃない?」

S「何が?」

A「…え?」

S「何が仕方ないんだ?一生そのままで良いワケないだろ」

A「勿論そうだけど。なかなか癒えない傷だってあるんだよ」

S「癒えないからって、そのままにしとくのか」

A「可哀想じゃない。時間が解決する事だってあるよ」

S「わかってるよ。時間にしか解決できない事だって、たくさんあるさ。
でも、ニノの場合はどうなんだ?」


翔ちゃんは、まるで怒ってるみたいだった

その意味が俺にはまるで分かんないよ


S「俺はニノと似た境遇だから思うのかもしれないけど
これって、時間にしか解決できないのか?」

A「…え?」

S「俺は…勇気だと思う」

A「…勇気?」

S「うん。その…負の思いから抜け出す勇気」


一理あるとは思う

でも少しだけカチンときた

そんなのは分かってる

正論だよ

でも、心の問題は正論だけじゃ片付かないんじゃないの?


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