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ツインテールの君

第1章 聖夜の宴のデザートは?



 更級國佳(さらしなくにか)は、ある田舎町の温泉旅館の客室にいた。



 イ草の匂いの染みた和室は、ガラス窓の向こうにとりこめられた夜の色を淡く薄める寒気をものともしない。ぬくぬくとエアコンが行き届いていた。

 楕円形の卓袱台には湯沸しポットと茶葉、和菓子。床の間に水墨画の虎が威嚇している掛け軸。

 ピンク色のクリスマスツリーだけが、日本的な情緒の中できらびやかな異彩を放っていた。



 今夜はクリスマスパーティーだ。


 國佳は職場の同期の風島せりは(かざしませりは)と、ここで聖夜の女子会を企画していた。



 相棒が温泉を楽しんでいる暇を縫い、國佳は姿見をチェックする。

 細いコテで巻いた栗色の髪はツーサイドアップに結ってあり、赤いリボンを飾った天辺から、しっかりカールしてあった。
 フリルレースがふんだんにあしらわれたオフホワイトのブラウスは、姫袖のギャザーが惜しみなく寄せてあり、首元には豪華なシャボに小さな星のピンブローチ。とり合わせのジャンパースカートは赤だ。 前身頃にサテンのリボン、後ろ身頃にシャーリングが施されていて、大胆なバッスルが下半身のシルエットを盛り立てる。


 全て國佳達の職場で見立てたものだ。


 市内で稀少なロリィタメゾン『Failieta Milk』──…。

 今夜のパーティーの参加者にも、そこで國佳の担当している顧客がいる。

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