不透明な男
第1章 記憶の無い男
耳にかかる熱い息。
それに反して震える様な声で話しかけてくる。
おれに話しかけてるんだよな…?
だけど、この声は聞き覚えがない…。
大きな手が俺の頬を触る。
優しく包み込んで来る。
あぁ…
なんか…
なんだろう?
すごく暖かくて気持ちいいなぁ…
「ほら、その顔。」
震えていたはずの声の主がクスッと笑う。
「お前が安心した時にする顔だよ。」
あんしん…?
いや、確かになんかほっとするけども。
なんなんだろうな、このほわっとした感覚。
「なぁ、嘘なんだろ? ふざけてるだけなんだろ?」
俺の頬にキスをする。
それは、そのまま俺の唇にふわりと触れた。
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