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嫌われ狸の一生

第3章 転落

子供の頃のボクは比較的裕福な家庭に育った。
恐い父親だったが、超合金とかおもちゃも買ってくれるし、遊園地とかもよく連れていってもらった。

小学2年生の時に家族が転落するまでは・・・

父親は電気技術とかが得意で、そういう会社に勤めていて、エリート対偶だった。
営業もしていたのだが、車を貸してくれていたことからも対偶のよさが分かる。

そういえば、この後父親は職を転々とすることになるが、いつも会社の車を貸してもらっていて、自分で買った車が家にあったことはなかったな。

父親はこういう才能に長けていて、当時にすれば立派なカラーテレビも取引先かどこかからもらってきたし、母親が留守番をしてくれればいいからと知人の不動産屋の居宅部分にただで住まわせてもらっていた。

このもらってきたカラーテレビは壊れても蹴ったり叩いたりして映るようにしてボクが高校生ぐらいの時まで家にあったなぁ。

不動産にただで住まわせてくれているからといって、母親が不動産といやらしい関係にあったことはない。母親は不倫相手になるようないい女でもないし。

この不動産はO氏とK氏の共同経営だった。
ボクが中学に入った頃からK氏がガンになって休みがちになるとO氏は堂々と不倫相手の女を事務所に連れ込むようになった。

そして中学3年生の時についにK氏が亡くなると、居宅部分に愛人を住まわせるからとボクたち家族は追い出された。こんなカンジです。

さて、家族の転落に話を戻そう。
父親は仕事はできるが天狗気質で自分が大将でないと気に入らないところがあるので、エリートで有頂天になると、なんと自分で会社を起こしたのだ。

それがボクが小学生になる頃。
歳の離れた妹がデキた頃でもある。

事業は最初は順調だったようで、ボクは将来は社長だよとかいろんな大人にちやほやされた記憶がある。

ところが順調なのは最初だけだったようで、一年ぐらいで会社は倒産。多額の借金を背負うことになる。

ボクは裕福でいろいろ買ってもらったり遊びに連れていってもらったりするのを経験しているが、妹は生まれた時からドン底なので、ボクばっかり悪いなぁとは思っている。

事業でコケると周囲は掌を返したように冷たくなり、あるのは厳しい借金の取り立てのみ。

人間なんて所詮は愚かな生き物でしかないということをボクは小学2年生にして悟ってしまった。

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