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嫌われ狸の一生

第2章 両親のこと

ウチの両親の夫婦仲はもう最悪だった。

亡くなった人のことはあまり悪く言いたくもないけど、父親は短気で独裁者で酒乱で金遣いが荒くギャンブル好きだったことによるところが大きいと思う。

ケンカになると、父親が酒を飲んだこともあって大暴れをして、母親が耐えているというカンジだった。

こういう男の典型的なパターンだが、父親は優しい時にはスゴく優しかった。
そして、仕事はスゴくデキた。
まさに典型的なパターンだよね。

父親が酒を飲んで暴れるのを見る度に、こんな家は早く出ていきたいと思っていたものだ。

母親はなんでこんな男と結婚したのだろうとも何度も思ったけど、いろいろいいこともあったのだろう。

ボクだって、今、なんでこんな女と結婚したのだろうと思っているもの。

そう考えると結婚相手に恵まれない不幸なDNAは母親譲りなのだろうね。

ボクは父親のことは恐ろしかったし嫌いだった。

ものごころ付いて父親のことで思い出すのは父親にぶっとばされている姿だ。

2歳ぐらいのことだからあまり覚えていないが、ぶっとばされていることだけは鮮明に記憶がある。

後で聞いたことによると、当時仕事バリバリだった父親はふだんはあまり家にいなかった。
そんなある日、母親とボクが揃って熱を出してしまい、父親がボクの面倒をみようとしたのだが、ひどくぐずったことに腹を立てたらしい。

2歳か、ふだんいない父親よりも母親に介抱してもらいたかったのだろう。無理もないかな。

見ていられなくなった母親が熱があるところ起きてきてボクを介抱してくれたらしい。
2歳とはいえ申し訳ないことをしたと思っている。

また、子供の頃のボクはケンカは強かったよ。
元々は弱くて、泣かされていたが、父親が家にいると、ケンカで負けてケガをして泣いて帰れば、ケガをしていてもかまわずに蹴りが飛んできて勝つまで帰ってくるなと厳しく叱責された。

だから強くなったんだよな。自分が強く生きれていることを思えば、こんな環境で育ったことにも感謝しているよ。
我が子を谷底に突き落とすライオンみたいだよね。

父親はボクが泣くと激しく叱責したものだ。
男が人前で泣いていいのは親が死んだ時ぐらいだと厳しく言っていたな。

ボクがポーカーフェイスなのはこの叱責のおかげだからこの点も感謝している。

父親が亡くなった時もボク泣かなかったけど・・

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