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最後の恋

第1章 はじめに

彼と出会ったのは、3月の初めだったと、私は思っていた。

でも彼は、1月の終わりだよ、と笑った。

私は気づいていなかった。初めて言葉を交わした3月初めを、最初の出会いだと思っていた。

君はあの時グレーのワンピースを着ていて、上からモスグリーンのコートを羽織っていたよ。

彼はそう言ったけど、私は思い出せなかった。

そうでしたっけ?と首をかしげる私に、彼は、一目惚れだったからね、と笑った。

だから2月になると彼を思わずにはいられなくなる。

私が気づきもしない間、彼は一人私を心に留めていてくれたのだと。

ああ、彼は恋をしていたんだな、と思う。そんなふうに、相手が自分を思っているかどうかなんて関係なく、相手のことを覚えていられるなんて。

そして今私は、彼のことをよく思い出せる。

癖の強いくしゃくしゃの髪に、白いシャツ、長身の背中。厨二病が治らない、と言いながら、ごついシルバーアクセサリーをつけていたことも。

だから私も、彼に最後の恋をしたんだなと思う。

そんな最後の恋の思い出を、思い出すままに書いていこうと思う。

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