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Face or Body

第59章 生まれくる命

うっ…!!

ううう――――――――――――――!!

ヒカルの痛みに耐える声が響く

6月…
ヒカルが監禁されている
山縣の別荘で
ヒカルは今
新しい命を産み出そうとしていた。

山縣が息子たちと呼ぶ
闇世界の住人たちには
高い専門性をもつ者たちもいる…

そのなかには
医師も存在している
息子たちとはいえ
看護師資格をもつ女性も存在している

そんな医療集団により
ヒカルは今
新しい命を生み出す瞬間を迎えていた…

誰にも祝福されないなんて
悲しいことを思って
生まれてこないでね…
私だけは
お腹のなかで頑張って育ってくれた
あなたを祝福してあげる
私はあなたのママよ!!

ヒカルは
ひとしきり踏ん張った!!

次の瞬間…
オギャー
おギャー!!と産声が聞こえた…

『マキマチさん。元気な女の子ですよ~。』
医師がヒカルにそう
教えてくれた。

ヒカルは
ひとつの命をこの世に生み出した
母としての達成感に満たされた。
看護師が赤ちゃんをきれいに洗い
ヒカルのわきに置いた。
赤ちゃんは
自然とヒカルの乳首にしゃぶりつき
母乳を飲み始めた…。

赤ちゃんの小さな手に
ヒカルは指を伸ばす…
その小さな手は
迷わずヒカルの指をギューっと握りしめた。

ヒカルは
この子は誰の子かなんて関係ない!!
この指を握りしめる
生まれたばかりの命をしっかりと
守ることが自分がすべき
唯一絶対的なことだと誓った。

―――
でも、この子は…
私から引き離されたりはしないだろうか…

そんな不安もヒカルのなかで
生まれていた。

そしてヒカルは決意した。

―――
アキラ…
こんなことになるなんで
誰も想像しなかったよね…

もう私はアキラの前に現れる資格ない…。

だけど
この子を生まざる得なくなった…
いや!!
あの私を励ますかのような胎動を感じた
あの日から
私はこの命を守らなきゃ…
って誓ったんだ…。


ヒカルが出産した6月のこの日…
山縣の別邸に
梅雨の合間の穏やかな日差しが
降り注いでいた。

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