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Face or Body

第59章 生まれくる命

『私はね… …このベイエリアを薬物を使用して支配していた港竜会を50年かけて潰そうとした…。 一方で、私の力で表社会からドロップアウトした者たちを救済しようとした。彼らに港竜会が薬物を与えたら、このベイエリアは無法地帯になりかねないからね
…。  …………ただ、無償な慈愛を彼らに与えすぎた…。善良な表世界のカケルに深い傷を与えた…。だからカケルのあなたへの復讐に手を貸したよ。 ……しかし、それはマキマチヒカルというひとりの女性の幸せと
表社会での居場所を失わせることになった…。』
と山縣はヒカルに語る

そして
山縣は深々とヒカルに土下座をし
『申し訳ない…』と詫びた

……………

……………

深い長い沈黙が流れた。

……………

……………

『それを私に言うために、この部屋に呼び寄せたのですか?』
ヒカルが
腕のなかでスヤスヤ寝息をたてる
トウコを抱き締めて
山縣に問いかけた…。

『あなたへの償いに、あなたの望む人生を与えたい。そして… あなたの残りの人生を支えたい…。』
山縣は振り絞るように
ヒカルにそう答えた。

ヒカルは
沈黙をする…。

そして
『山縣さん、あなたはなぜ港竜会を潰そうと思ったんですか?』と
ヒカルは山縣に問いかけた。

山縣は自らの生い立ち
彼の父が築いた港竜組を
柳大作がクーデターを起こして港竜会に
作り替えたこと
そのクーデターのなかで
若頭だった村山も倒されたこと
その村山の子供が
ヒカルの恩師村山一平であり
村山一平こそが
闇世界を山縣と二分した
ダンナなる人物だということも…

……………

……………

ヒカルは今日この場で知りえた
50年以上に及ぶ
復讐の根深い連鎖が絡み合う事実を
噛み締めた

『復讐は不毛地帯を増やすだけ……。』
とヒカルは絞り出すように呟いた。

そして…
『私に新しい人生を与えてくれるのなら…』

瞳に強い意思をのせて
山縣に話しかけた。

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