テキストサイズ

Face or Body

第67章 海にかかる虹

ヒカルはアキラとともに
あの事件のあと
相模湾に浮かぶ
人口150人ほどの小さな島【花島】の
駐在所への赴任を決意した。

アキラが心身とも
極限状況に追い込まれながら
警察官としての
潜入捜査官としての激務を遂行し続けたヒカルに
つかの間の休息を与えてあげたかったからだった


ところが
この花島の海の匂いに包まれた
ヒカルは夢中になった
生まれ故郷の山口の海を思い出したのだろうか?

さらに
島の住民の不器用だけど
暖かい人柄にヒカルは心を癒され
幼いトウコにはこの
自然豊かな環境もよいのではと考えるようになり

気がつけば
赴任以来17年間の歳月が
流れてしまったのだった。

その間に
トウコはすくすくと成長した
そして
島で一番の美人な才媛となっていた。

高校は花島から船で対岸の
小田原にある高校に通学を続けた。

そして見事に
東京にある国立大に現役合格を果たしたのだった

――――
今日はトウコが
東京に旅立つ日………。
昨日までの雨が
嘘のように晴れ上がった朝になっていた。

トウコの国立大合格は
相模湾に浮かぶ小さな漁師町にとっては
おそらく最初で最後の快挙じゃないかと
島のみんなは
トウコの旅立ちを祝うために
集まったのだ。

『いやあ… さすがは駐在さん夫婦のお嬢ちゃんだよ~!! トウコちゃんいい子だもんねぇ!! アキラさん寂しくなるよなぁ!!』
漁師たちのなかの
長老の作太郎がアキラに声をかける。

アキラはトウコを
実の娘のように育てた。
精一杯の愛情を注いできた。

『ねえ!!父さん。母さんは?』と
見送りのみんなに囲まれながら
トウコがアキラに話しかけた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ