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Face or Body

第7章 転機

『嬢ちゃん…、あの刺された巡査ってさ…
嬢ちゃんの大事な人じゃねえか?』

デーブなる先輩刑事は
捜査会議が終わり
被疑者の石渡優が
立ち寄りそうな捜索に回るクルマのなかで
ヒカルにストレートに聞いてきた。

『あの…。【嬢ちゃん】ってやめていただけないでしょうか? 【青山】って名字で読んでください。』

助手席のヒカルは
デーブなる先輩刑事に伝えた。

『じゃあ青山…、あの刺された巡査ってさ…
嬢ちゃんの大事な人じゃねえか?』
と改めて
デーブはヒカルに尋ねた。

警察官どおしの交際は
そう珍しいことでもないし
隠すことでもないが
あのカケルを確保した事件のあと
交際を開始しまだ2ヶ月…
オープンに交際を知られるのを
ヒカルもアキラもためらっていた。

『もしそうであっても、捜査に私情をはさんだりはしません。心配しないでください。大丈夫です!!』
とヒカルは
助手席で巨漢のデーブが
運転する姿を見つめて答えた。

『ならいいんだよ。秘密な今は…』
巨漢で
いかつい表情を緩めながら
デーブはヒカルに優しく呟いた。

ヒカルはその表情を見て少し
落ち着いた。

『嬢ちゃん…あ…青山。俺は、東三条忠興【ヒガシサンジョウ タダオキ】ってんだよ。名字で呼ばれても、名前で呼ばれても長いだろ? 舌噛みそうだろ? やっぱり名前は短いのが理想だよな…』

と緩めた表情のまま
助手席のヒカルに話しかけた。

ヒカルは
『じゃあ私はデーブさんって呼んじゃいますね。』
と表情を緩めて答えた。
アキラが刺されてから
初めてヒカルの切れ長の瞳に
少しだけ
リラックスした色が浮かんだ。

『この仕事してたらさ… いつも眉間にシワが入り、緊張感と悪に対して怒りが湧くよな…。でも緊張や怒りだけに支配されたらダメなんだよな…。俺さ、嬢ちゃんの教育係を任されたんだけど、嬢ちゃんを相棒として扱うから、なんでもガラス張りで付き合おうや』
とヒカルに諭すように話した。
『あ!!悪りい…青山だったな』
とデーブはオチャメに肩をすぼめて
言い直した。

ヒカルは
笑顔で返事をした
『よろしくお願いします!!【嬢ちゃん】でやっぱりいいですよ。デーブさん。』

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