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泣かぬ鼠が身を焦がす

第8章 網の目にさえ


電気を消して俺の横に入ってきた杉田さんは、いつも通り俺を抱き寄せる

逞しい腕、人の体温
何度もそれで眠ってきたはず

でも、
身体は安心してるのに、心が乱れたまんま


薄っすらと目を開けると、視界の上の方に映る杉田さんの凛々しい顔


あーーもーー
俺、ほんとになんでこんなんになったワケ

恥ずかしい
恥ずかしい

今までの俺は、もっとちゃんと立場を弁えてたハズ

なのに今の俺は、杉田さんの全部を知りたいって思ってる


この部屋はどうして、誰のために作ったの?
本来の自分の家に待ってる人はいるの?
子供は?
愛人はいるの?
会社の人?


どうして今日俺とセックスしたいなんて言い出したの?

俺のこと
どう思ってるの?


溢れ出る疑問に比例するように俺の目には涙が溜まって視界がぼやけた


「……っ」


それを俺は拭わずに、杉田さんの胸元のシャツに擦り付ける


「!」


そしたら俺の頭に杉田さんの手が降ってきて、優しく撫でられた


俺、杉田さんに全部お金出してもらって生活してて
杉田さんがいないと生きていけない

でも、そういう意味じゃなくて別の意味でも
杉田さんがいないと生きていけないよ




杉田さんのこと、好き

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