
泣かぬ鼠が身を焦がす
第13章 正直の心より
そう言うと杉田さんは俺を優しく抱き締めて、小さな声で「俺だけがよかった」って呟いた
あ、言い忘れたけど
母さんとあいつは知ってるんだけどね
でもなんか、杉田さんの嬉しそうな顔見てたらどうでもいいか
「杉田さんは?」
「ん?」
「杉田さんは、なんか俺に話しておくことないの?」
俺はすげー深いところまで話したんだから
杉田さんの秘密もなんか話して欲しい
すると、俺の質問への答えじゃなくて
「さっきから誤魔化してるみたいだが、ちゃんと下の名前で呼んでくれ」
ってまず指摘された
バレてたのか
だって恥ずかしいんだもん
「う……た、拓真さん……」
小さな声で呼ぶと杉田さ……拓真さんは満足そうな顔をして、俺の前髪にキスを落とした
くっっっっっそ
慣れてやがんな
とは思うけど、こんなことでいちいち顔熱くしてることにイライラする
「でも、俺の人生には特に話せるような事はないな……」
「はぁ? ねーわけねーじゃん! 秘密にされると気になるんだけど」
「とは言われても思いつかんな」
思い出すような仕草を繰り返した拓真さんは、終いには「何か聞きたいことはあるか?」って聞いてきた
