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泣かぬ鼠が身を焦がす

第16章 馬に蹴られる


朝が来て拓真さんがもぞ、と動くと俺は寝たフリをした

普段こんなに早く目を覚ますことなんてないから
不自然にならないように

この行動も、拓真さんに嘘をついているみたいで少し胸が痛んだ


「……」


でも、起きたはずの拓真さんは何故か動き出さない

代わりに感じるのは、俺の顔への視線


バレてる、のか……?
いやでも抱き締められてるから、正面から見られてるわけじゃないし


それでもバレちゃいけない、と何故か必死になって


「……っ……」


身動ぎするフリをしながら、拓真さんの胸に顔を埋めて隠した

すると


うあ、わぁ……


拓真さんは俺の頬を指で撫でたり、頭を撫でたりし始める


なにこれ
俺が寝たフリしてんのわかっててからかってんの……?

それとも普段から寝てる俺にこんなことしてるわけ?


後者の選択肢を思いつくと同時に無性に恥ずかしくなる

優しい手つきで俺の頬、額を撫でられ
背中を大きい手で摩られた


やばい
声でそう

性的な快感の声じゃなくて
猫が飼い主に撫でられて鳴くみたいな
心地よさで出る声が


「……」


早く終われ……っ


そう念じていると、最後にきゅ、と俺を抱き締め直して拓真さんは離れた

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