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泣かぬ鼠が身を焦がす

第16章 馬に蹴られる


俺に与えられた2択を、頭の中で考える


茜さんに拓真さんと付き合ってんのは俺だから、って言う?

それで傷つく茜さん見るの嫌だな


じゃあ拓真さんに茜さんが拓真さんのこと好きだってって知らせて、俺には純だけだって言ってもらう?

それも結局は茜さんを傷つけてちゃうし、そんなズルみたいなことしたくない


じゃあ俺はどうしたいんだろう?


「……」
「……」


考え込んで黙る俺を、ヒトミさんは静かに待っていてくれる


「俺、は…………拓真さんの誕生日をちゃんと祝いたい……」
「え?」
「俺が恋人なのに、茜さんの方が拓真さんのこと知ってて、プレゼントだってはりきって用意してるのが悔しい……」


ちゃんと、恋人らしいことをしたい
俺が拓真さんの恋人なんだから


俺の答えにヒトミさんは


「でもアンタ、その女が用意してそうで拓真さんにも似合うようなものを買えるほどのお金なんてないでしょう?」
「……うん」


もの買えるほどのどころか、お金なんて持ってない

銀行の口座だって作ったことないし、そもそも作れるのかも知らないし

働き口だって、戸籍のない俺を雇う店なんてあるわけない


「じゃあ、諦めるしかない、のかなぁ……」

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