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泣かぬ鼠が身を焦がす

第21章 能ある鷹も身を焦がす(サイドストーリー)


頂いていた名刺を頼りに電話番号を入力し、電話を耳に当てると少し間を置いてから呼び出し音が鳴り始めました


1コール
2コール


何コールで切ろうと考えているわけではなく、ただ単に落ち着くためだけにコール数を数えます

すると、4コール目が途中で途切れて


『はい、三村です』


三村様が出られました


「……」
『? もしもし?』


自分からかけたはずなのに、何を話せばいいかわからなくなってしまいました


「……っ、伊藤です」
『!』


電話越しで、明らかに驚いている気配


私が電話をかけるなんて思ってもなかったんでしょうか


「ご用件があると伺ったのですが」
『あぁ、はい。ちょっと待って下さい』


私が少し不機嫌に言うと、焦り気味で言われます

そして、場所を移動するようなパタパタという音がしました


『お待たせしました。今日、暇?』
「……ご用件を伺えますか」
『あー……そうだな。昨日の謝罪を兼ねて食事でもどうかと思って』


謝罪
やはり、昨日のことは「謝罪すべき悪いこと」のようですね

見た目は誠実そうなのに、案外中身は軽いのですか
……別に、何か他の対応を期待したわけではありませんが

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