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泣かぬ鼠が身を焦がす

第26章 嘘八百


俺はひと晩ベッドの上で蹲ったまま過ごした

外から鳥の鳴き声と、家の中からお手伝いさんが働き始める音が聞こえて朝が来たのがわかる


「…………」


家の中でパタパタと音がするから、部屋の中は静まってない

けど、俺の心の中はひと晩で随分と落ち着いていた


そうだよ

焦ったってしょうがなかった
俺に出来ることなんて限られてる

でも、俺はもうそんなに弱くない
大丈夫

1人でちゃんと、拓真さんとこ帰れる


……
拓真さんがどう思ってるかは、今は考えない


「すーーー…………はーーーー……………」



深く息を吸って
吐く

うじうじしてた自分を肺の中から追い出すように

ずる賢く生きてきた俺にちゃんと戻れるように


「……よし」


まずは、家にいる人間の情報収集から

昨日の話からして、母さんは夜家にいない
昼間は?

あとあの人の動向もだ
絶対暇なんてことないから、いない時間の方が多いはず

自分で見張れないから俺の部屋に鍵を閉めたんだろうし


淡々と考えていればもっと頭は冷静に動くようになる


テレビ……までは取られてない
から、あの人がどこで何をしているのかざっくりとは知ることが出来る

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