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泣かぬ鼠が身を焦がす

第27章 苦あれば


身体中が痛いのに変わりはないし、意識が戻ったって言っても指1本動かす気力はない

けど嬉しくて、抱き着きたい気持ちでいっぱいで

なのにそれを叶えることが出来なくて


色んなことが混ざった俺は、堰を切ったように涙を流した


「う……ぅぅぅ……ぅうー……」


喉もまともに使えないし、嗚咽を抑える筋肉も今は使えないから馬鹿みたいに唸り声を上げる

ぼやけた視界じゃ拓真さんがそんな俺にどんな顔をしたのかわからなかったけど


「……っ」


黙って強く抱き締めてくれたことだけはわかった


泣きすぎて頭痛い

でも、痛いってことは夢じゃないわけだから
現実なんだよね

俺ちゃんと
帰ってこれたんだよね


ここがどこかも正直わからない

病院か、拓真さんの家か、会社のあの部屋か

でも、どれにしても俺が帰りたかったのは拓真さんの腕の中なわけだから


「ぅ……ぅぅ……ぅあ、あぁぁぁあ……っ」


ここに帰ってこれて良かった

で、正解


拓真さん

俺指1本も動かせないぐらい疲れたよ
でもそれぐらい頑張ったんだよ

ねぇ

またあそこに帰したりしないよね



拓真さんの隣にいたいよ

また俺のこと好きって言ってよ

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