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泣かぬ鼠が身を焦がす

第27章 苦あれば


その時、どこかから別の声が聞こえた


「ーーー!!!」


なに
なんだ

呼ばれてる……?
俺の……名前……


そう気がつくと同時に、意識が少しずつ薄れた

目の前にいるあの人も、輪郭が徐々に背景と混ざっていく


よかった
やっと、目が覚める


俺は胸を撫で下ろして、時の流れに身を任せた

俺の名前を呼ぶ声も大きくなってきている


「純!! 純!!!」


!!
拓真さんの声……?

うそ


目の前の光景がホワイトアウトしていく

幸せな気持ちでいっぱい

だったけど


「!」


最後の最後
薄れていく意識の中であの人が不気味な笑いをその顔に浮かべた


そして


「お前が淫乱なのは、これから先どこへ行ったって変わることはない。お前はずっとーーー」


ーーー汚いまま



最後の言葉が俺の頭に響いて、なにも見えなくなった

その一瞬後


「純!!! 純!!!」


少しの間途切れていた拓真さんの声がまた聞こえ出す

ちゃんと現実であることを確かめたくて目蓋を開いた

とはいっても、身体のダメージが残ってたからか薄っすらしか開かなかったけど

それでも拓真さんは俺に気がついてくれて


「純?」
「……ぁ……」


数日ぶりに拓真さんの顔を見ることができた

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