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泣かぬ鼠が身を焦がす

第28章 画竜点睛

拓真目線


腕の中にいた純の身体から力が抜けた

恐らく眠ったんだろう


「ふぅ……」


誰も見ていない、という安心感から俺は息を吐いた


まだ、手が震えている

現実だと実感出来ていないからなのか安心感からなのか
それとも、もしまた離れることがあったらという恐怖心からか


いや、考えるのはやめよう

あるかもわからない次を考えて怯えるのは不毛だ


俺は眠った純から少しだけ身体を離し、改めて顔を覗き込んだ


大丈夫だ

純はちゃんとここにいる
俺の腕の中に

自分の脚で戻ってきてくれたんだ


着替えさせなければと服を脱がし傷ついた純の身体を見て、俺は血液が凍るのを感じた

あれほどまでの衝撃はきっと人生で1度きりだろう
……1度きりであってほしい


守りたかったはずが、純を傷つけていた自分の不甲斐なさに虫唾が走る


俺は今まで何のために生きてきたんだ
何を学ぶための人生だったんだ

大切な人1人守れないなんて、馬鹿が過ぎる


「……」


自分への怒りに打ち震えていると、腕の中の純が


「たくまさ……」


と小さく俺の名前を呼んだ


「!」


起こしたか?

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