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泣かぬ鼠が身を焦がす

第28章 画竜点睛


しかし俺の焦りは杞憂だったらしく、純はまだ寝息を立てている

胸を撫で下ろしつつ俺は純の顔にかかっていた髪を退けてやった

すると、またもぞもぞと動いた純が俺の名前を呼んで


「!」


少しだけ身体を話していた俺の方へと身体を寄せてきた

その何気無い行動に、俺の目頭が熱くなる


年をとって涙脆くなったのだろうか
さっきも涙を流してしまったな

こんな姿、純には見せられない


俺は純の柔らかい髪に鼻を埋めた

純の匂いを嗅ぐと、心が穏やかになる感覚がする


……変態みたいだ
これも純には言えないな


「……」


静かな空間に純の寝息だけが響いている

暫くなかったこのことにも俺は心底安心した

純がいて
そしてそのことを実感できる全てのことに安心している


暗さに慣れた目で俺は自分の手を眺めた


今度こそこの手で純を守る
二度と手放したりしない


純と自分への誓い

その次に浮かんできたのは純を傷つけた人間への恨みだった


純は復讐を望まないだろうか
でもそれでは俺が納得いかない

総理大臣という立場なんて関係ない

人に負わせた傷は自分に返ってくる
そのことをしっかりわからせてやらないと気が済まない

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