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泣かぬ鼠が身を焦がす

第29章 黒白を


少しして痛みが引くと俺はまた拓真さんに向き直る


「拓真さん、仕事は?」


すると拓真さんは微笑みながら


「優秀な秘書が、暫くは自宅で仕事が出来るように調整してくれたんだ。だから心配するな」


と言った


秘書、って伊藤さん?

そうなんだ
自宅で仕事が……


俺が感心していると拓真さんは「それに」と付け足す


「純がこんな状態なのに、放っておけるわけがないだろう」
「!」


な、なんだその顔
反則


「べ、つに……1人でも大丈夫だし……」


俺の強がりに、拓真さんは俺の髪の毛にキスを落としつつ


「俺が一緒にいたいんだ」


と言う


「……っ」


顔……燃える……!
無理!!!

なんか別の話題!!!


「……っお、お腹空いた! 拓真さん朝ごはん食べよ!」


俺が慌てて作り上げた話題に、拓真さんは


「そうだな。もうこんな時間だし、食べるか」


と言ってくれて、ベッドから身体を起こした


「昨日の今日だとまだリビングで食べるのは難しそうだな。またこっちに持ってくるから待ってろ」
「うん、ありがと」


俺はほっとしながらそう返事したんだけど、直後に気がついた

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