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泣かぬ鼠が身を焦がす

第29章 黒白を


俺みたいに考えなしじゃない
そりゃそうか

じゃあほんと、俺はついてくだけでいいのか


「純」
「? なに?」
「お礼は言葉だけでしかしてくれないのか?」
「え……」


突然何言ってるの


動揺する俺に対して拓真さんはいつの間にか悪戯っ子みたいな顔で笑ってる


「…………なに、して欲しいの」


拓真さんのことだから金銭の要求とかはないだろうけど

マッサージとか?
肩たたき?

いやいや小学生か


俺の乏しい発想を完全にスルーして、拓真さんが俺にした要求は


「純からキスして」


だった


「え…………俺、から……?」
「そう」


俺からキス、って
今までしたことあったっけ……?

いや、ないかも?

つーかそんなこと意識したら急に恥ずかしくなってきた!!!


迷っている俺に、拓真さんは軽く眉を寄せた


「してくれないのか?」


ちょっと困ったようなその顔は明らかに捨てられた子犬のそれで


俺がいない間にすっかり甘えたになってない!?


「あ、ちょっと……」


そんなことを考えてる隙に拓真さんは俺の両手を取って自分の方に引き寄せる

俺は抵抗できず拓真さんの方へと近寄った


椅子に座ったままで俺より下にいる拓真さんに腰の辺りを捉えられて動けない

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