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泣かぬ鼠が身を焦がす

第29章 黒白を


拓真さんが何も言わずに歩き出して、俺もそれに続いた


「……ねー」
「何だ?」
「アレ、って何?」


さっき義父さんが言ったアレは全部黙っていて貰えるのかってやつの「アレ」

きっと拓真さんが何かを脅しに使ったんだろうけど


俺が聞くと拓真さんは言うかどうな悩むような表情を浮かべた

そして


「有名税、ってやつだな」


とだけ言う


「有名税? なにそれ」
「わからなくていい」
「えー」


俺にここまで黙ってるってことは言いたくないって事なんだろうな

俺はそう判断して、それ以上は聞かなかった


「疲れただろ。飯に行こう」
「仕事は?」
「問題ない」


拓真さんが俺を見て少しだけ笑った
その顔にすごく安心する


「俺寿司食べたい。回るやつ」
「回転寿司か? 回らない方がいいんじゃないのか、普通」
「拓真さん知らないの? 最近の回転寿司すげーから、本当に。もうむしろ寿司屋じゃないから」


俺の言いように拓真さんはまた笑う


「回転寿司なんて、行った記憶がないな」
「はぁ!? なんだそれ、金持ち発言むかつくー! 絶対今日は回転寿司ね!!」


俺たちは呑気にご飯の話をしながら、裁判所を後にした

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