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泣かぬ鼠が身を焦がす

第6章 病に薬なし


俺の身体に回された腕を指でつついてみるけど、やっぱり杉田さんからの反応はない


寝ろって言ったの俺だし
仕方ないな
気が向いたら謝るとしよう


と謝るのをやめて俺も寝ることにする

もぞもぞ動いて自分の収まりの良いところを見つけると自然に「ふへ」と息が漏れた


変に気張ってて疲れちゃった
まだ昼前だし起きたばっかといえば起きたばっかだけど、よく寝れそう


杉田さんの息はまだ荒い
身体も熱い


それらが全部辛そうで、俺は杉田さんの胸板に額を合わせる


「早く良くなるといいな」
「……」


汗で額に張り付いた前髪を避けてやって、目を瞑る


今日はもう絶対自信ある
あの夢は見ない

なんでかわかる

だって、こんなに穏やかな気持ちで眠れたことなんて覚えてる限りはないし


なんかこの身体の芯があったかいのは何だろ
心臓が煩いのも治ってないし

こんなに異常が出てるのに穏やかって
変なの


俺もお医者さんに診てもらって
薬でも出して貰えば良かったかもしんない


ま、死んだら死んだでいいけどさ


「ふぁ、おやすみ……」


とりあえず今は
数少ない良い夢を見れそうなチャンスを逃さないように
早急に寝よう

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