
好きになったらダメだよ
第3章 声は出したらダメだよ?
2年生の教室は3階にある。
1階が職員室や保健室。2階が1年生の教室、3階が2年生の教室、4階が3年生の教室となっている。
私たちの使う準備室などは特別校舎にあり、職員室とかのある校舎とは、渡り廊下を挟んで向かい側に立っている。
小走りで階段を駆け上がり、教室を覗くと、伊都は教室のほぼど真ん中、自分の席でプリントをしていた。
「……伊都……」
一歩ずつ彼の席に近付き、声をかけた。
「あ、終わったんだ。お疲れ様ー。」
伊都は席から立ち、私にプリントを差し出す。
「プリントできたよ。」
「あ、うん。また見ておく。」
受け取って軽く目を通す。本当に20点とったのかと疑いたくなる出来だ。
「そうだ!私ね、返さないと行けないものがあって……。」
パンツスーツのポケットから合鍵を抜き出す。
「土曜日はありがとう。朝ご飯も美味しかった。」
その一言に伊都が一瞬、頬を染めた気がしたけど、多分気のせいだ。
夕焼けのせいで、教室はいつもより赤みを帯びている。
「鍵は愛莉にあげるよ。」
「えっ?」
伊都は鍵を手にして、再び私のポケットにしまい込み、私の腰に手をあてて、そっと自分の方に引き寄せる。
「いつでも来て。」
「……伊都。」
この距離感。伊都の香り。伊都の体温。
目を閉じたら、唇が重なるのをすぐに感じた。
